Chat GPTやGoogleのBardは本当に脅威なのか?

Chat GPTについていろいろと言われているようなので、ここら辺でボクの正直な感想を言います。

最近はGoogleも対抗して「Bard(バード)」というサービスを提供し始めましたが、まあ同じようなものです(実はBardは以前からあったのだけれどもChat GPTが公開されてチャットボットの人気に火がついたので無理矢理ひきづり出された経緯がある)。

【Chat GPT】

https://chat.openai.com/chat

【Bard】

https://bard.google.com

このうちGoogleの「Bard」はこの記事を書いている今現在(2023年3月24日)、米国もしくは英国居住者で、さらに少人数のテスターに限って使用されています。

つまりGoogleの「Bard」はこの記事を書いている現時点では、一般用途として使うことはできません。

また中国産の検索エンジン百度(バイドゥ)でも2023年3月16日に「文心一言(ウェンシンイーイェン)」というチャットボットを発表しています。(文心一言の英語名は「ERNIE Bot」)

文心一言(ERNIE Bot)はまだ発表に踏みとどまっており、公開されてはいません。

Chat GPTは本当に脅威なのか?

Chat GPTは脅威であると言われていたり、革新的なサービスだとか言われています。

確かにそのような側面もあることは事実ですが、脅威になるとしても少なくとも今後10年とかそれくらいはかかるかと思っています。

ITの業界に身を置くボクの感触ではChat GPTはそれまでに飽きられる可能性が高いと思っており、今とは違う形で一般ユーザーが使うことになるし浸透していくのだろうなと思っています。

まず大前提。現時点では、Chat GPTは言われているほど優れたAIではありません。

「Transformer」という機械学習アルゴリズムを利用しているのですが、これがあまり優秀ではないんです。

理由としてはいろいろあるのですが最大の問題が「画一的な答え」を用意してしまっているところにあります。

それが複数の回答として表示されていようと「画一的な答え」を用意してしまっています。このアルゴリズムの詳しい説明はここでは行いませんが、だからAIが事実をでっちあげることも簡単にできます。

機械学習のベースとなるものが間違っていれば、そもそも間違ってしまいますし、それをコントロールすることは現時点での技術では難しいと思っています。

Chat GPTは情報を比較することができない

また、検索エンジンはクエリ(質問事項)に対してたくさんの回答がなされ、それぞれを人間の目で「比較」することができますが、Chat GPTは「これはこうです」なんです。だから間違った答えでも堂々と「これはこうです」と提示します(笑)

これが問題の一つとなっていてGoogleのBardは一般公開を踏みとどまっていたわけなんですが、今回Chat GPTの人気に火がついてしまったため、無理矢理公開させられてしまったのです。

現在のところChat GPTは、ほとんどの質問に対して「1+1=2」のような答えを用意してしまっている。多少の「揺れ」はあるにしろ、基本的には「画一的な答え」しか出せません。

例えば、ビジネスの世界に置き換えていただければわかりますが、たった一つの「単純な答え」で処理できるほど、物事は単純ではありません。

実際は、さまざまなシチュエーション、社会情勢、ざっくりといえば「条件」次第でその打ち手が有効であるかどうかは大きく変わります。

現実的な世界では、なかには解決策として矛盾しているようだけれども、状況によっては正しいことなど原理原則に反する答えを使わなければならないこともあります。

そもそも現在の世の中の仕組みをはじめ、ビジネスシーンは複雑なので、一つ一つの問題に対して、それぞれにあった解決方法を見つけ出していかなければならないし、そうすることはごく自然なことでもあるのです。

でもそれを「たった一つの回答」や「画一的な回答」「原理原則」に「答え」としてまとめてしまっている時点で「無理」があります。

「複雑な問題」を「ある単純な方法」で全て解決しようとするなんて土台無理な話なのです。

Aという状況では「1+1=2」という打ち手が有効だけれども、そこにそれぞれの性質が異なる「A +B」となった場合「1+1=2」という誰にでもわかる単純な法則や答えでは解決できず、相反する、矛盾した打ち手が必要になることもあるのです。

これを防ぐために、Bardではそれぞれの質問に対して「3つの回答」に限定しており、提示された「回答」に対して「いいね」や「よくない」ボタンが設けられてフィードバックが受けられるようになっていたり、合わせてWEB検索で使うための質問を提示するようにしたり、情報に対する配慮がなされていますが、これでもまだ完璧ではありません。

例えば「今の経済状況はどうすれば良くなりますか?」

これをChat GPTに質問すると下記のような答えが返ってきます。

Chat GPTに今の経済状況はどうすれば良くなりますか?と質問した例

経済状況を改善するためには、様々な対策が必要ですが、以下にいくつかの提案を示します。

1.財政政策の実施

財政政策は、政府が歳出や税制度の変更などを通じて経済を調整する政策です。景気の低迷期には、公共投資や減税などを通じて経済を活性化させることが求められます。

2.金融政策の実施

金融政策は、中央銀行が金利やマネタリーベースなどを調整することによって経済を調整する政策です。景気の低迷期には、低金利政策や量的緩和政策などを通じて資金調達を促進し、経済活性化を図ることが求められます。

3.雇用創出策の実施

景気低迷期には、失業率の上昇が問題となります。雇用創出策として、中小企業支援や新しい産業の育成などを通じて、新しい雇用の創出を促すことが求められます。

4.グローバルな視点を持った政策の実施

世界的な景気の低迷期には、国内だけでなく、海外の経済情勢も重要な要素となります。グローバルな視点を持った政策の実施が求められます。例えば、貿易の自由化を進めることによって、海外からの需要拡大を図ることができます。

これらの対策を総合的に実施することで、景気の低迷期からの脱却を目指すことができます。ただし、対策の効果はすぐに現れるわけではないため、長期的な視点での対策が求められます。

・・・原文ママ

以上の4つの答えが返ってきます。内容を見てみるともっともなようにも感じますが、どれも教科書的でいて、具体的な策とは言えません。

過去起こったことと照らし合わせて、「知識」として提供しているに過ぎないと感じます。

例えば、Chat GPTに質問して「どうすれば成功できる?」のような問いをかけていったとしても、成功できないと思います。そこには個々のシチュエーションが含まれていないし、そこまで機械学習として個々に寄り添ったサービスを提供することは不可能だからです。

試しに「どうすれば成功できる?」と質問を投げかけてみました。回答は下記の通りです。

Chat GPTにどうすれば成功できる?と質問した例

成功するためには、以下のような要素が必要です。

1.目標設定と計画の策定

成功するためには、まず自分が何を目指しているかを明確にし、目標を設定する必要があります。そして、目標を達成するための計画を立て、具体的な行動を起こすことが重要です。

2.努力と継続的な取り組み

成功するためには、努力と継続的な取り組みが必要です。簡単に目標を達成できるものではなく、逆境にも耐えることができる強い意志や忍耐力が必要です。

3.知識とスキルの習得

成功するためには、必要な知識やスキルを習得することが必要です。自分が目指す分野に関する専門知識や、コミュニケーションスキルなどが重要となります。

4.行動力と決断力

成功するためには、行動力と決断力が必要です。自分の判断を信じ、自分の意見を持って行動することが重要です。また、失敗した場合でも、すぐに立ち直り、次に向けての行動を起こすことが必要です。

5.ポジティブなマインドセット

成功するためには、ポジティブなマインドセットが必要です。自信や前向きな考え方、達成感を感じることができるポジティブな心の状態が、成功につながります。

以上のような要素を意識して、自分が目指すことに全力で取り組むことが、成功への近道です。ただし、成功は簡単に手に入るものではなく、時間と努力が必要な場合があります。失敗や挫折があっても、前向きに取り組み、自分の目標を実現するための努力を続けることが重要です。

・・・原文ママ

悪くはないのですが、画一的ですよね。

もちろん細かい状況までを入力して質問すればそれぞれの状況に即した回答はなされるのだろうと思いますが、そもそもそれならGoogle検索したほうが良くない?というような状態になります。

Chat GPTは機械学習が進むほどにバイアスが掛かっていく

そしてChat GPTの1番の問題点は、使う人が多ければ多いほど、バイアスがかかっていき、同じになっていくということです。つまりAI の学習によって答えがどんどん偏っていきます。

機械学習というと、使えば使うほど、AIが学習して便利になって、より的確な回答が得られると思っている方が多いのですが、これは正しくはありません。正しくは、学習すれば学習するほどバイアスがかかっていきます。

そしてこれが弊害となる場面が多い。

実は現在のAIはあまり頭が良くありません。デジタルな処理は人間よりもはるかに優れていますが、デジタルではないアナログの部分では、まだまだ人間にははるか及びません。

例えば、AIには人間と同じように学習機能があって質問に対して、その「答え」を学習していきますから、最終的には同じ答えになっていきます。

つまり偏向していきます※。

想像力は人間に与えられた神様のギフトだと言われたりしますが、機械学習での学習の仕方は、想像を膨らませることができません。

あくまで過去の内容と照らし合わせたり、デジタルデータの中で処理していきます。つまり過去の事例を参考にして、過去、どういうことが起こったから、こうだ、こうに違いないという法則を学習しシンプルな答えを返してしまうのです。

人間のように過去あったことを参考にして、それを想像したり発展させた考え方に昇華させることはできず、あくまでデジタルのデータをもとに処理していきます。

だからAIに支配された世界はとてもつまらない世界になってしまうのです。人間の自然な営みの一つである想像力が奪われた世界と言ってもいいと思います。

そうなった時、多分このAIの評価が大きく分かれると思います。

※近年のGoogle検索の結果として表示されるWEBサイト群は、主要なキーワードで検索すると、どれも同じような内容になっていることが多いですが、これはGoogleが近年AIによる機械学習を進めた結果起こってしまった弊害であるとみて取ることもできます。

以前は一つのキーワードで検索しても、もっと多種多様でいて多角的な視点でまとめられたウェブサイトがたくさん表示されていましたが、今はどんどん同じような内容のウェブサイトばかりが表示され、情報が偏向していってしまっています。

AIの機械学習が進むとこうした情報の偏りが普通に起こり、重要でないと判断されたサイトはどんどん検索結果外に飛ばされていき、ないものとされていってしまいます。

結果、より「A=B」であるという要素が濃くなっていってしまうのです。それが「間違った情報」だったとしても「正しい情報」であるとAIが勝手に判断していってしまうのです。

Chat GPTは短命に終わる可能性が高い

Chat GPTについては、言いたいことはたくさんありますが、あとマーケティング上の問題点は、一気に話題になり過ぎたこと。

現時点での期待値が高すぎてしまっているため、一般的にイメージされているAIとのギャップが大きすぎるんです。

マーケティング的な視点になるのですが、長く生き残るサービス、継続して利用されるサービスというのは、時間をかけて浸透し、気がついたら、一般的になっていたという流れになることが多いです。

それが勢いで話題になってしまうと、話題だけかっさらって短命で終わってしまう可能性が高い。

本来であれば、じわじわと世の中に浸透していく、浸透させていく、気がついたら、それを自然とそれが使われるようになっている、これがマーケティング的に正しいやり方です。

例えばGoogleの検索エンジンのように。

この点はさすがGoogle、一気に増やすのではなく、徐々に一般的なテスターを募集して、少しずつ情報精度を高めていこうとしています。

Chat GPTとは異なる戦略をとっているわけです。そもそもアルゴリズムが違いますから、当たり前のことと言ってしまえばそれまでなんでしょうけど。

Club houseの例を忘れてはならない

ちょっと前に「Club house」というサービスが流行りましたが、今使っている方どれくらいいるでしょうか?ほとんどいないはずですし、ぼくがClub houseという単語を出すまで存在すら忘れていた人も多いはずです。

これは一気に人気がで過ぎてしまったり、力のない状態で話題になり過ぎてしまったからです。力のない状態でマーケティングの力を使って無理矢理、持ち上げられてしまうと、短命で終わってしまうことが多いんです。

市場に合わせることができず進化の過程で必要な時間をかけブラッシュアップすることができずに、勢いに飲み込まれていってしまうんです。

そうですねぇ、身近でいてとても、わかりやすい例で言えば、SNSで昨今活躍されていた方、どんどんいなくなってしまっていますよね。

流行ってしまうと、廃れるのも早く、短命で終わってしまうんです。それは特定のグループにおいても一緒だと思ってください。

おまけ:AIによる画像生成サービス「Stable Diffusion」

Chat GPTと似たようなサービスに、Stable Diffusion(ステーブル・ディフュージョン)というAIが画像作成(画像生成)をするサービスなんかもあります。

【Stable Diffusion】

https://stablediffusionweb.com

これは本物さながらの画像を、特定の言語を使うことで画像を生成していくサービスなのですが、やはりすごいと思いつつも、まだまだだなという印象を拭えません。

一見するとクリエイティブに見えるのですが、何かが違う。そう感じることが多いです。

ただ、こうしたAIが弾き出す「答え」を参考にしていくことはできます。

基本ができていれば、AIが弾き出した「答え」を参考にして、うまくご自身のビジネスに取り入れたり、うまく当て嵌めたりすることはできます。

つまりAIに使われるのではなく、AIを使いこなす、この発想が今後非常に大事になってくると思います。

今の世の中の流れを見るとAIに使われている、振り回されているような雰囲気がすごく漂っていますので、この流れが加速すると多分、人類が崩壊すると思います。

現在公になっているAIはあくまで「機械的な処理であり、過去の事例や内容をまとめたものに過ぎない。想像性に乏しい」ここをしっかりと抑えておく必要があります。

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